お施主さんの生家を建て替え、ご夫婦とお子さん、そしてお母さまが暮らす三世帯の住まいとして計画しました。
敷地は、古くに玉石でかさ上げされた高台にあり、二辺を幅員の狭い道路に囲まれています。各方角から道路斜線や高度斜線がかかるため、高さの制限を受けながら、必要な床面積をどのように確保するかが、この計画の大きな課題でした。
そこで、約3mあった既存の造成地盤を一部掘り下げ、地下1階を鉄筋コンクリート造、地上部を木造2階とする混構造としています。
建物は、各方角からかかる斜線をかわすため、敷地に対して少し角度を振って配置しました。
この配置によって、隣家と正面から向き合うことを避けながら、建物と建物の間へ視線が抜けるようになりました。室内にも光が入りやすくなり、西側には泉ヶ岳の稜線を望む窓を設けています。
アウトドアが好きなお施主さんご家族にとって、暮らしの中で遠くの山並みがふと目に入ることも、この場所で暮らす楽しさのひとつになればと考えました。
また、建物を斜めに配置したことで、敷地と建物の間には、場所ごとに形の異なる余白が生まれています。
その余白には植栽やデッキを設け、室内から庭へ、暮らしが自然に広がる場所としました。
外壁には板張りを取り入れ、室内にも木の素材を使っています。時間とともに少しずつ色や風合いが変わり、家族の暮らしになじんでいくことを想定しました。
三世帯がひとつの建物で暮らしながら、それぞれの生活も無理なく続けられること。
敷地の高低差や周囲の住宅、遠くに見える山並み、法規上の条件まで含めて、この場所に合う住まいを考えました。
















The Third Value
この計画では、法規に対応するためのひとつの判断が、光の入り方や眺め、外部空間のつくり方にもつながっていきました。
建物を斜めに配置したのも、最初は斜線制限に対応するためです。
ただ、角度を振ることで隣家との視線がずれ、建物と建物の間に抜けが生まれました。そこから光が入り、西側には泉ヶ岳の稜線も見えるようになりました。
さらに、敷地と建物の間には場所ごとに異なる余白が生まれ、その一部を植栽やデッキの場所として使っています。
法規に対応するための判断が、室内の明るさや眺め、外とのつながりにまで広がっていく。
この住宅では、そうした関係をひとつずつ確認しながら設計を進めました。
条件をそれぞれ別々に処理していくと、どうしても全体に無理が出ることがあります。
高さの問題は高さだけで解決する。
視線の問題は窓だけで解決する。
外部空間は残った場所に設ける。
そうではなく、ひとつの判断がいくつかの課題に対して自然に働くような形を探しました。
また、三世帯が暮らす住まいであるため、家族が自然に顔を合わせられる場所をつくりながら、それぞれの生活が近づきすぎないことにも配慮しています。
一緒に暮らす安心感は残しつつ、生活の時間や過ごし方の違いを無理に揃えない。
家族が集まる場所と、それぞれが落ち着いて過ごせる場所をつくり、その間を緩やかにつなぐことで、三世帯が無理なく暮らせる距離感を整えました。
敷地の条件も、ご家族それぞれの暮らし方も、最初から答えが決まっているものではありません。
その場所を見ながら、お施主さんの話を聞きながら、必要な広さやつながり方を少しずつ整理していく。
敷地にも、家族にも、どちらか一方だけに無理をさせないこと。
この家に合う形を探しながら設計しました。