独立してから、設計だけではなく、会社の経営も考えざるを得なくなりました。
経営を考えるということは、つまり「数字」と向き合うことでもあります。
建設コスト、備品、機器、諸経費、借入返済。
ひとつひとつ金額を積み上げて、収支を見ていくうちに、気づけばお施主さんの事業計画まで考えるようになっていました。
このくらいの建設費なら、月々の返済はこれくらい。
この単価で売れれば、利益はこれくらい残る。
そんな計算をしていると、自然とこう思うようになります。
「建設コストは、できるだけ抑えたほうがいい」
きっと、経営者の方なら同じように感じる場面が多いと思います。
私自身もそうです。
自分が発注する側に立ったときも、やっぱり同じでした。
ここは削れる。
ここも少し抑えられる。
返済のことを考えると、やっぱり不安になる。
気づけば自分でも、
「建築コストは抑えた方がいいですね」
と言っていました。
でも、最近少し考え方が変わってきました。
もちろん、コストを抑えることは大切です。
無駄なコストは削るべきです。
ただ、何でも削ればいいわけではない。
どこを削るのか。
なぜ削るのか。
逆に、どこにはお金をかけるべきなのか。
そこを間違えると、短期的には安く済んでも、長期的には価値を失ってしまうことがあります。
たとえば、断熱性能を落とす。
素材の質感を妥協する。
使う人の体験に関わる部分を削る。
そのときは金額が下がっても、完成後の使いやすさや、維持費、印象、売上、ブランドに影響することもあります。
建築は、完成した瞬間がゴールではありません。
むしろ、完成してからがスタートです。
10年、20年と使われていく中で、本当の価値が見えてくるものだと思います。
だから最近は、単に「安くつくる」ことよりも、
「どこにお金を使うか」を一緒に考えることが大事なのではないかと思っています。
見えない部分である構造や性能に投資すること。
人が触れる素材や空間の質に投資すること。
来店者や利用者の体験に投資すること。
それらは、ただの費用ではなく、将来に向けた投資になる場合があります。
もちろん、毎回きれいに答えが出るわけではありません。
理想だけでは進まない。
でも、数字だけでも決めきれない。
設計者としての考えと、経営者としての現実。
その間で、いつも揺れています。
だからこそ、THREEeでは建築を単なる空間づくりではなく、事業や暮らしの未来を一緒に考えるものとして捉えたいと思っています。
建設コストを単なる費用として見るのではなく、
時間とともに価値を育てるためのお金として考える。
数字と感覚。
理想と現実。
短期の収支と、長期の価値。
その両方を行き来しながら、
その人、その場所、その事業にとって、ちょうどいい答えを探していきたい。
それが、今の自分なりに考えている設計のあり方です。
とはいえ、経営って本当に難しいですよね。
理屈ではわかっていても、数字を見ると不安になる。
自分で言っておきながら、毎回迷います。
もし経営に正解があるなら、僕にも教えてほしいです。