仙台市中心部に近い、住宅や店舗が混在する街区に建つ、教育関連事業を展開する企業の新社屋です。
模試や教材に関わる業務には、解答・採点、印刷、スキャニング、サーバー管理など、正確性とセキュリティが求められる機能が含まれます。一方で、新社屋は単なる業務の器ではなく、働く人にとって日々の拠点となり、街に対して企業の姿勢を伝える場所でもあります。
敷地は、南北にずれた二つの長方形がつながるような形状で、約1mの高低差を持っていました。その条件を読み解きながら、セキュリティへの配慮が必要な室と、比較的開くことのできる室を整理して配置しています。
採点や印刷、情報管理に関わる室は、外部からの視線や動線を抑え、業務に集中できる場所へ。一方、歩道のある市道に面する南側には、街との関係をつくりやすい室を配置しました。事務所建築でありながら、人の気配や活動の明るさが街へ伝わる構成を目指しています。
働く場所としては、固定席に加え、フリーアドレス型のスペースも設けました。業務内容や集中度に応じて働く場所を選べるようにし、柔軟な働き方を受け止めるオフィスとしています。
室内の床には、オフィス用途としてはめずらしく無垢フローリングを採用しました。一般的な事務所ではメンテナンス性を優先してタイルカーペット等が選ばれることも多くありますが、この計画では、働く環境そのものの質を高めることを大切にしています。足元に木の質感があることで、業務空間でありながら硬くなりすぎず、長い時間を過ごす場所としての落ち着きが生まれています。
また、全館空調を採用し、建物全体で安定した温熱環境を保てるようにしました。集中力と正確性が求められる業務において、室温のむらや場所ごとの不快感を抑えることは、働く環境の質に直結します。
南面には大きな開口部を設け、室内に光を取り込みながら、街に対する開放感をつくりました。開口部には既製品の樹脂サッシを組み合わせ、コストと断熱性能のバランスを図っています。
構造上必要となる筋交いは、隠すべき要素ではなく、建物を支える仕組みが外観に表れる要素として扱いました。大きな開口と筋交いが重なることで、内部の明るさと建物の成り立ちが、街からも感じられるファサードとなっています。
外観は、周辺の住宅や店舗、歩道の街路樹と呼応するよう、落ち着いたトーンのグリーンを採用しました。新社屋としての存在感を持ちながらも、街並みに自然に馴染む表情を大切にしています。
変形敷地と高低差、セキュリティと開放性、コストと性能、業務の合理性と働く環境の質。それぞれの条件を整理しながら、教育事業を支えるための確かな機能と、働く人や街にとっての明るさが両立する建物を目指しました。









The Third Value
教育に関わる事業では、表に見える成果だけでなく、その背後にある正確な業務の積み重ねが信頼を支えています。
採点、印刷、情報管理、教材や模試に関わる作業は、日々の仕事として淡々と行われるものですが、その一つひとつの精度が、利用者や地域からの信頼につながっていきます。
この建物で大切にしたのは、そうした事業の性格を、単なる機能配置としてではなく、働く環境の質まで含めて建築化することでした。
守るべき場所はきちんと守る。
開ける場所は街に向けて開く。
そして、働く人の足元や空気の質まで整える。
無垢フローリングや全館空調は、目立つデザインのためだけの選択ではありません。長い時間を過ごす人の身体感覚や集中力に関わる部分を、事務所建築の中できちんと扱うための判断です。
オフィスは、外から見れば企業の顔であり、内側では働く人の日々を支える場所です。
街に向けた明るさと、業務を支える堅実さ、そして働く人のための快適さを同じ建物の中に共存させること。そこに、この計画の第三の価値があると考えました。
新しい社屋が、事業の成長を支える器であると同時に、働く人にとって誇りを持てる場所となり、街の中で企業の信頼が穏やかに伝わっていくことを望んでいます。