構造設計を主軸としながら、内装設計も手掛ける設計事務所のオフィス改修です。
限られた一室の中に、日々の設計業務を行う作業エリアと、来客を迎える打合せスペースをどのように共存させるか。
この計画では、用途ごとに壁で明確に区切るのではなく、家具や床、天井の部分的な操作によって、それぞれの居場所を緩やかにつくることが考えられています。
弊社は、Paterson inc.による内装設計のもと、デザイン協力および施工を担当しました。図面に描かれた意図を現場でどのように納めるかを検討しながら、素材の厚みや接合部、設備との取り合いなどを一つずつ整えています。
空間の中央には、床から浮かせるように設えた本棚を配置しています。
本棚は細いスチールパイプによって支持され、床面との間に余白を残しました。一般的な壁や背の高い収納とは異なり、視線や光、空気の流れを遮りすぎることなく、作業エリアと打合せスペースの間に適度な距離をつくっています。
書籍や資料を収める家具でありながら、空間を分ける間仕切りでもある。その二つの役割を重ねることで、31㎡という限られた面積を細かく分断せず、必要な機能を一室の中に収めました。
本棚越しには互いの気配がわずかに伝わりますが、視線は直接重なりすぎません。スタッフが作業を続けているときにも打合せを行うことができ、用途の違いを保ちながら、ひとつの事務所としてのつながりが残る構成です。
天井は、外周部を除いて既存の仕上げを撤去し、上部の構造体や設備を現しにしています。
均一に仕上げて整えるのではなく、既存躯体の凹凸や施工の痕跡を残すことで、この建物がもともと持っていた素材感を空間の一部として活かしました。
構造設計を仕事の中心とするクライアントにとって、構造体は仕上げによって隠される背景ではなく、建築を成立させる考え方そのものでもあります。
その構造をあえて見せることが、装飾的な表現に頼らず、事務所の仕事や姿勢を伝える要素になると考えました。既存の荒々しさを残した天井と、寸法や納まりを整えた家具や照明が同じ空間に存在することで、構造の合理性と内装としての意匠性が重なっています。
床には、作業エリアと打合せスペースで異なる柄のタイルカーペットを用いています。
壁や段差を設けなくても、床面の切り替わりによって、それぞれの領域を自然に認識できるようにしました。本棚による立体的な分節と、床仕上げによる平面的な分節を組み合わせることで、開放感を保ちながら、仕事の場と対話の場を整えています。
色や素材を大きく変えて空間を分けるのではなく、同じ空間の中にわずかな差をつくること。その差が、働く人の動きや家具の配置と結びつくことで、用途ごとの居場所が生まれています。
このオフィスでは、完成した空間だけでなく、どのような構造で支えられ、どのように組み立てられているかが自然に見えてきます。
構造体、スチール、本棚、床、照明。それぞれが単独で主張するのではなく、必要な役割を担いながら関係し、一室の中に奥行きのあるワークスペースをつくっています。





The Third Value
構造と内装は、一般的には異なる領域として扱われます。
構造は建物を支え、内装はその内側に機能や表情を加えるもの。それぞれに異なる役割がありますが、このオフィスでは、その境界を明確に分けすぎないことが空間の特徴となっています。
既存の構造体を現すことで、建物の成り立ちそのものを意匠として活かしながら、スチールパイプで支持された本棚には、家具と間仕切りという二つの機能を持たせています。
構造的な合理性と、空間を整えるためのデザインを別々に考えるのではなく、一つの要素に複数の役割を重ねることを大切にしました。
また、限られた面積に必要な機能を詰め込むのではなく、視線や光を遮らない方法で領域を分けることで、一室としての広がりも残しています。
分けることと、つなげること。
構造を見せることと、働く環境を整えること。
設計の意図と、施工によって実現する精度。
それらの間にある関係を一つずつ調整することで、構造設計事務所としての思想や働き方が、説明的になりすぎず空間に表れることを目指しました。
使い手の仕事が積み重なり、本や図面、模型が少しずつ増えていくことで、この場所が設計事務所らしい風景へと育っていくことを望んでいます。
内装設計:Paterson inc.
デザイン協力・施工:THREEe inc.