都市の中心にほど近い街並みに建つ、鉄筋コンクリート造4階建ての建物です。
低層部にはガレージとオフィス、上層部には居住空間を配置し、働く場所と暮らす場所という異なる用途を、ひとつの建築の中に重ねています。
求められる機能や過ごし方はそれぞれ異なりますが、階ごとに完全に分断するのではなく、素材や光のつながりによって、建物全体に一体感をつくることを大切にしました。
外観は、鉄筋コンクリートの量感を基本としながら、ファサードの一部に銅板と叩き加工を施したステンレスパネルを組み合わせています。
無機質で均質になりやすいコンクリートに対し、光を受けて細かく表情を変える素材を加えることで、建物にわずかな揺らぎを与えました。
朝の斜光、曇り空、雨に濡れた時間。それぞれの状況によって反射の仕方が変わり、建物の見え方も少しずつ変化します。
街に対して強く主張するのではなく、周囲の光や天候を受け止めながら、静かに存在する外観を目指しました。
建物に入ると、正面のガラス越しにガレージが見えます。
ガレージは単に車を収める場所ではなく、施主が大切にしているものを日常の中で感じられる空間として計画しました。ガラスによって室内とガレージを視覚的につなぎ、車の輪郭や外から入る光が、エントランスの風景の一部となるようにしています。
オフィスでは、躯体のコンクリートを覆い隠さず、その質感を空間の背景として活かしています。
一方で、設備や照明をただ露出させるのではなく、黒い金属フレームの中に整理しました。構造の力強さを残しながら、働く場所としての秩序と落ち着きをつくるための判断です。
階段室では、壁際に設けた間接照明がコンクリートの表面をやわらかく照らします。
上部にはトップライトを設け、外部に対して閉じた階段室の中にも、時間や天候の変化が伝わるようにしました。
上り下りするたびに、光の位置や影の形が少しずつ異なります。各階を結ぶ階段を、単なる移動のための場所ではなく、仕事と暮らしの間で気持ちを切り替えるための余白として考えました。
上階の居住空間では、コンクリートの質感を引き継ぎながら、石材、金属、ガラス、木、ファブリックなどを組み合わせています。
オフィスと共通する緊張感を残しつつ、手に触れる部分や長く過ごす場所には、暮らしに近い質感を加えました。
浴室や洗面室では、大判タイルやガラスによって要素を絞り、都市の中にありながら、外の密度から少し距離を置ける場所をつくっています。
また、それぞれの多目的室には用途や過ごし方に合わせて異なる素材を用い、建物全体の統一感を保ちながらも、場所ごとの小さな変化が感じられるようにしました。
建物を通して共通しているのは、素材を完成時の状態だけで捉えないことです。
銅板は酸化によって色を深め、ステンレスは周囲の光を映し、コンクリートも風雨や日差しを受けながら、少しずつ表情を変えていきます。
新しくつくられた状態を保ち続けるのではなく、使われる時間や環境の変化も建築の一部として受け入れることを考えました。
デザイン監修・家具・内装工事:OGATA.inc

















The Third Value
この計画で大切にしたのは、それぞれの用途に必要な距離を保ちながら、素材と光によって緩やかなつながりをつくることでした。
コンクリートという共通の骨格を残し、オフィスでは機能や構造の合理性を表し、住居では石や木、金属などの質感を重ねています。
すべてを同じに整えるのでも、用途ごとにまったく異なる空間にするのでもなく、共通するものと変化するものを選びながら、建物全体の関係を整えました。
また、素材の経年変化や、トップライトから差し込む光の移ろいによって、建築の中に時間の変化が感じられることも、この建物にとって大切な要素です。
完成した瞬間を最終形とするのではなく、働く時間、暮らす時間、街の光や天候が積み重なることで、少しずつ建物の表情が育っていく。
これからお施主さんの日常とともに素材の表情が深まり、この場所ならではの時間が、建物の中に静かに積み重なっていくことを望んでいます。