TopProject Family Dental Clinic

Family Dental Clinic

地域の時間を受け継ぐ歯科クリニック

  • 設計・監理
  • 施工
  • クリニック
  • 増築
  • 改修
  • 木造

長年にわたり地域の暮らしに寄り添ってきた歯科医院の増改築計画です。

院長の代替わりという節目を機に、これまでこの場所に積み重ねられてきた親しみや安心感を受け継ぎながら、医院としての再出発にふさわしい診療環境へ更新することを目指しました。

計画前の建物は平屋でしたが、診療に必要な諸室や機能を整理する中で、一部を2階建てとして増築しています。単に面積を増やすのではなく、既存建物の成り立ちを読み解きながら、必要な場所に手を加え、診療機能、構造性能、断熱性能の向上を図りました。

長く使われてきた建物をすべて壊してしまうのではなく、活かせる部分を見極め、支え直し、これからも安心して使い続けられる状態へ整えることを大切にしています。

外観は、白を基調とした清潔感のある表情を引き継ぎながら、エントランスまわりに木の質感を加えています。医院としての明るさを保ちつつ、訪れる人をやわらかく迎え入れる佇まいを目指しました。

新しさを強く主張するのではなく、これまで通ってきた人が自然に受け入れられること。そして、新しい世代の医院として少しだけ変化が感じられること。その両方を意識しています。

内部は、合板や木材を素直に用いた、明るく温かみのある空間としました。

受付から待合、診療室へと木の質感が連続し、医療施設に求められる清潔さの中にも、緊張を少し和らげる空気をつくっています。白い壁や医療機器の清潔感に対して、木の柱や間仕切り、建具が加わることで、子どもから高齢の方までが落ち着いて過ごせる環境を目指しました。

待合には、保護者の目が届く位置に子どもが過ごせる小さな居場所を設けています。家の形を思わせる入口は、待ち時間の中に少しだけ楽しさをつくり、子どもにとって医院が怖い場所になりすぎないよう配慮したものです。

診察室は、天井を高く取り、木の柱と高さ1.8m程度の間仕切りによって診察台ごとの領域を分けています。

完全な個室として閉じてしまうと、空間に圧迫感が生まれやすくなります。一方で、すべてを開放すると、診療中の視線や落ち着きが保ちにくくなります。

そこで、視線を適度に遮りながら、上部には抜けを残す構成としました。患者さんの安心感を守りつつ、診察室全体には明るさと広がりが感じられるようにしています。

また、スタッフ同士の動きや声が届きやすいことも、診療空間として大切な要素です。診察台ごとの落ち着きと、医院全体としての連携のしやすさ。その両方を成立させるため、完全に閉じない間仕切り方を選びました。

窓から入る自然光は、木の壁や床に反射し、室内に穏やかな明るさをもたらします。診療という日常の行為が、少しでも落ち着いた時間として感じられるよう、素材、光、動線、性能を一つずつ整えました。

The Third Value

歯科医院の増改築では、新しい診療環境を整えることが必要です。

必要な諸室を増やし、設備を更新し、構造や断熱性能を高め、患者さんやスタッフにとって使いやすい場所へ変えていく。一方で、長く地域に親しまれてきた医院には、建物そのもの以上に、そこへ通ってきた人たちの記憶や安心感が積み重なっています。

この計画で大切にしたのは、変えることと、残すことの間を丁寧に考えることでした。

平屋だった建物に一部2階建ての増築を加えながらも、地域の中での佇まいや、これまでの医院が持っていた親しみやすさは大きく変えすぎない。見た目の更新だけでなく、構造や断熱といった見えにくい部分も整え、これからの診療を支える建物へ再構築する。

そこに、今回の計画の大切な意味がありました。

内部では、診察室を完全な個室にするのではなく、1.8m程度の間仕切りで緩やかに分けています。患者さんの落ち着き、スタッフの働きやすさ、診察室全体の明るさと広がり。そのどれか一つに偏らず、診療の場として必要な関係を整えることを考えました。

医療施設としての機能と、地域の人が安心して通える日常性。
新しい院長のもとで再出発する医院と、これまで積み重ねてきた親しみ。
患者さんのための落ち着きと、スタッフのための使いやすさ。
見える木の温かさと、見えない構造・断熱性能の向上。

それらの間にある関係を一つずつ読み解き、次の世代へ引き継げる歯科医院として整えることが重要と考えました。

これからもこの場所が、地域の人にとって気負わず通える医院であり続け、日々の診療とともに新しい時間を穏やかに重ねていくことを望んでいます。

Data
業務内容
設計・監理、施工
用途
クリニック
種別
増築、改修
構造
木造
規模
214.4㎡
竣工
2025
場所
宮城県気仙沼市